welcome to my world

07/07/10

「ヴェー……」
 小さなイタリアが途方に暮れていた。
 この子がめそめそと泣いているところはよく見かける。絵を描くことが好きで大人しいイタリアはフランスやスペイン達にしょっちゅう苛められていた。だが、今日のイタリアの困り方はいつもと違うような気がして、つい声をかけてしまう。
「おいイタリア」
「――イギリス?」
「って、いったいどうしたんだよそれ!?」
 イタリアが抱えているものを見たイギリスは目を剥いた。それは小さなイタリアよりもっと小さい幼児だったのだ。
「スペイン兄ちゃんとお船で探検に行ったらこの子を見つけたの。でもスペイン兄ちゃん、もっとキラキラピカピカしたのを探しに行っちゃったの」
 どうやらイタリアとスペインは新しい島か何かを発見したらしい。この幼児はその土地というわけだ。スペインは手のかかる育児をイタリアに押しつけ更なる冒険に出たようだが、イタリア自身まだ子供で、とても幼児の世話が出来るとは思えない。
 困り果てたイタリアの心を露ほども知らない幼児は、自分の前に新たに現れた男の顔を、見上げた。

 空色の瞳が、翠の瞳を映す。

 無心な幼子の視線がイギリスの胸を衝いた。か弱く誰かに守って貰わなければ生きられないであろう、この小さな存在に対する庇護欲で満たされる。
「俺がこいつの面倒見てやろうか?」
 気がついたら、そう口にしていた。
「いいの?」
 イタリアは少し心配そうな顔をしていた。スペインに叱られると思っているのだろうか。
「だってお前には荷が重すぎるだろ? 俺のところだったら余裕あるし大事に育ててやれるぞ。それにスペインが帰ってきたらこいつまでお前と一緒に苛められるかもしんねぇし」
 苛められる、という言葉に反応したイタリアはとうとう頷いた。
「この子、アメリカっていう名前なの」
「そうか。俺はイギリス」
「イギりちゅ?」
「ああ。今日から一緒に暮らそうな?」
 イギリスが腕を伸ばすと、アメリカは無垢な笑顔を浮かべて彼に縋った。

- 了 -


 新大陸発見からメイフラワー号まで130年近く間が空いてますが気にしない。コロンブス、ヴェスプッチに続き、北アメリカ大陸発見者のジョン・カボットもイタリア人。しかもイギリスに移住した人だそうです。

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