その髪に触れて

08/04/22

「本っ当に悪かった!」
 キューバは後頭部を決まり悪げに掻きながら、カナダに頭を下げた。
「また頭に血があがっちまって……せっかく詫びのつもりで招待したのに、すまねぇ……」
「いえ、僕はほんと気にしてませんから。今回は殴られる前に誤解が解けたし……
「お前、人が良いんだな」
 キューバはカナダの態度に感動しているようだった。本当はカナダは、単に萎縮しているだけなのだが、そんなことには気付かずキューバは「ちょっと待ってろや」と言い、カナダを置いてその場を離れた。
 暫くして戻ってきたキューバは、コーンの上に三段重ねになったアイスクリームをカナダに差し出した。思わずカナダの瞳が輝く。
「ほれ。今回の詫びに食ってくれや」
 カナダははにかんだ表情で受け取ったアイスを食べ始めた。普段忘れられがちなぶん、こうして気にかけて貰えると素直に嬉しいのだ。
「――にしても、お前本当にアメリカに似てるよな」
「よく言われますけどね。まぁ地続きだし……」
「何か、また間違えちまったりしたら悪ィし、簡単に見分けつく方法あればなぁ」
 そう言われて、カナダは少し考える。何しろかつての育ての親にもアメリカと間違えられた挙げ句、世間では存在そのものがぼやけていると噂される始末である。
(こまったなぁ――あ! フランスさんが言ってたっけ)
 カナダはアイスをコーンの半分あたりまで食べてしまうと、おもむろにキューバの手を取った。
「良いこと思いつきましたよ!」
 そして、そのままキューバの掌を自分の頭に当てる。
「僕とアメリカが一番似てないところって、髪質なんですよー。僕の方があいつよりサラサラなんです」
 相手が硬直していることに気付かず、カナダは自分の頭を撫でさせるようにキューバの手を動かした。何度か繰り返してからその手を解放すると、キューバは「うおっ」と短く叫んで一歩後ずさった。
「あれ?」
 何か悪い事をしてしまったのだろうか、とカナダは眉を顰めた。だがキューバは先程までカナダの髪に触れていた掌を二、三度握っては開いてを繰り返すと、何事もなかったかのように「これから良ィとこに案内してやんよ」と言ってくれた。
 カナダに背を向けた彼の顔には血が上っていたが、日に焼けた肌が上手く隠していた。

- 了 -


 この判別方法をうっかりアメリカの方にやってしまったら血の海が出来ると思います。。

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