05 公衆の面前で

07/11/10

 最近のイギリスはヨーロッパの連中とよく一緒にいる。
 彼は大勢の植民地を従えてた事はあっても友達は少ない、って言うのが定評だったのに。それもこれもEUなんてものができちゃったせいだ。
 この前もイギリスの家に遊びに行こうと思ったら、「すまねぇ、今からEUの議会行ってこなきゃなんねえんだ」って断られてしまった。
 イギリスはいつだって俺を最優先してくれていたし、仕事の件でも俺がイギリスについて知らない事なんて殆ど無かったのに。俺は「アメリカ」だから、ヨーロッパ勢が仲良く話しているところに割り込めない。頭では解っててもすごーくいらいらするんだ。

 今日は世界会議があって、久しぶりにイギリスに会う事が出来た。会議が終わると俺は、席を立とうとするイギリスを呼び止めた。
「イギリス! これから一緒に食事に行かないかい?」
 日本に良い店紹介してもらったんだ、と言いかけた俺の言葉を、彼の「あー……」って声が遮る。

「ごめんな。この後EUに加盟してるメンバーで打ち合わせが――」

 またなのか!
 これで何度目なんだろう。イギリスにとって俺は一番の友達で、何より恋人のはずなのに、どうして俺がないがしろにされなきゃならないんだ。イギリスはフランスやドイツ達と一緒にいる方が良いのかい?

 そう考えたらまたいらいらして、俺は反射的にイギリスの唇を塞いでいた。

「なっ、何すんだばかぁ!!」
 キスしてる間ずっと目を開けてたイギリスは、30秒ぐらいで我に返って俺を突き飛ばした。
「恋人がキスしちゃいけないのかい」
「ばっ、場所考えろよ! いい、今の思いっきり見られて――」
 イギリスの言うとおり、ここは世界会議が終わったばかりの会議場で、まだ退出してなかった国々が俺達に注目していた。
「別に、どうせみんな俺達の関係は知ってるじゃないか」
「そう言う問題じゃねぇだろ!?」
 きいきい叫ぶイギリスの顔はすごーく真っ赤だ。彼のこんな表情も暫く見れてなかったな。
「おーおー、焼きもちやいちゃったわけ?」
 突然フランスに後ろから肩を抱かれた。ニヨニヨして俺とイギリスを見比べている。
「ああそうだぞ。あんまりイギリスを君達で独占しないでくれよ」
 イギリスがまたバカ、って叫んだけど、俺は無視してフランスを軽く睨んだ。イギリスの一番は誰かって事を、今のキスでみんなが思い出してくれればいい。
「イギリス。お前はあとから来いよ。別に一時間でも二時間でも遅刻して構わないぜ?」
「んな事言って、後でさんざんからかったりバカにしたりする気なんだろ!?」
 俺はフランスの腕から肩を外すと、うるさいイギリスを正面から捕まえて抱きしめた。
「ありがとうフランス」
「遅刻はいいけど欠席はさせんなよ。じゃ、ごゆっくり」
 立ち去るフランスに軽く手を振ってから、俺はまだ騒いでいるイギリスの唇をもう一度狙った。

- 了 -


 即興のためEUに関して大いに誤解がありそうな文章ですが、カドが当たると痛いので社会の教科書は投げないでください。構われないのが嫌で暴走する米が書きたかったんです……。

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