接近のチャンス、花の文化祭

07/11/11

 生徒会役員には文化祭というものは無い。
 正確に言うと、文化祭の運営に飛び回っていて、自分が楽しんでいる余裕などまるでない、という事だ。
 フランスあたりはこっそりさぼって模擬店や展示を楽しんでいるのだが、その辺りの融通が利かず不器用なイギリスは生徒会長としての役目を果たすべく、だだっ広い学園の敷地内を巡回している最中だ。
「日本。亜細亜組の客入りは?」
 イギリスは、赤くおどろおどろしい字で「お化け屋敷」と書かれた看板の下に机と椅子を出して受付をしている日本に声を掛けた。
「おかげさまで盛況です」
 そうか、と言うとイギリスはチェック用の書類を基に日本に幾つか質問をし、貰った回答を書き込んで最後に「問題なし」と付け加えた。
「よし。もし何かあったらすぐに生徒会の誰かに連絡つけてくれ」
「了解です。イギリスさん、せっかくですから中を見ていきませんか?」
「いや、俺は仕事あるから――」
 イギリスが遠慮すると、日本は少しぐらい息抜きしてはいかがですか、と言った。
「それに、イギリスさんがいらっしゃる少し前にアメリカさんが入りましたよ」
 イギリスの肩がぴくり、と動く。
「モンスターを退治するぞ、なんて言って大道具を壊してなければいいんですが」
「じゃ、じゃあ俺がアメリカを見張ってやる!」
 そう言うとイギリスは足早にお化け屋敷の中に入っていった。
「相変わらず露骨な人だなぁ……」
 日本は呆れ顔で呟いた後、ふっ、と微笑んだ。
 実はアメリカが亜細亜組のお化け屋敷に突入してから結構時間が経っているのだが、未だに出口から姿を現していない。ホラーが苦手なアメリカのこと、何処かで動けなくなっている可能性はかなり高い。
 一方のイギリスは、天狗や河童を見たなどと普段から真顔で言っているぐらいなので、中に入っても取り乱すことはないだろう。
 チャンスですよイギリスさん、と心で思いながら、日本は次の客にジャパニーズ・スマイルを振りまいた。

- 了 -


 チャットでの見解をまとめると、中国が本気を出して4000年のコネで本物の妖怪を招聘し、その中にさりげなくおロシア様が混じってる亜細亜組のお化け屋敷。

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