04 背骨が折れるくらいに抱き締めて

08/02/06

 息が詰まり骨が軋む。加減を知らない青年の腕はただただ力を込めて抱きしめてくる。
「せ、ぼね、折れるだろ、ばか――」
 ただでさえもこの青年は、戦車を引き摺りながら駆け回れるほど力が強いのだ。本当のことにならないとも限らなかった。そして辛いのは締め付けばかりではない。爪が肩と腰に食い込んでくる。
 抵抗に意味は無くベッドに沈み込まされる。青年は熱に浮かされたように耳元で幾度となく彼の名を呼んだ。
「アメリカ、頼む、から」
 彼が懇願すると、青年はやっと腕を緩めて彼を見た。
「だって君が好きすぎてどうしたらいいかわかんないんだ」
 押し当てられた雄ははっきりと欲望を示しているのに、途方に暮れたさまはまるで子供だ。なんて狡い。青年にそんな顔をされて拒むことなど、彼には決して出来やしないのだ。
 彼は緩められて出来た隙間から、自身の腕を青年の背中に回した。青年は既に彼が抱えきれないほどに成長している。
「好きにしろ」
 ばか、と言うおきまりの台詞は声になるより前に青年に奪い取られた。

 あとはもう、乱暴に肌をまさぐってくる手に耐えながら、必死でしがみつくだけだ。

 若さゆえの性急さで繋げられた箇所は引きつれたように痛んだが、彼は青年に何も言わずに耐えようとした。だが、愛撫のときは決壊して溢れた己の情欲のみに気を取られているかに思えた青年は、最奥まで潜り込むと唐突に動きを止めた。
 彼は一体どうしたことかと思い、辛さを軽減するため大きく息を吐きながら青年を見た。
「アメ、リカ?」
 生理的な涙で潤んだ翠の瞳のすぐ側に唇を落とし、青年は今度はそっと、彼の身体を包み込んだ。
「どうしよう。すごーく幸せだぞ」
 ずっとこのままでいたいよ、と青年は囁く。
 ばかこっちは苦しいんだよ、と彼は青年を罵るつもりだった――が、彼の唇から零れたのは、俺も、という短い肯定のことばだった。

 途端に青年はまた手加減無く抱きしめてきて、彼は悲鳴を上げる羽目になってしまった。

- 了 -


 真夜中にこんなもん書いてるから気管支炎が治らないのだと気付いて早寝を心がけるようになりました。地の文で「彼」「青年」を貫き通しているのは、戻すタイミングを見失ったからです。

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