「君の家は相変わらず古くさいな!」
アメリカはいちいち腹が立つ言い方をする、とイギリスは思う。
「いつ来てもインテリアに変わりがないし。家具とかいったい何年同じものを使ってるんだい?」
「こういうのは末永く代々受け継いでいくもんなんだよ」
そう言いながらもイギリス自身の代替わりは有り得ないのだが、古きよきものを大切にする精神は彼の国民と変わらない。
「俺にはお前の大量生産大量消費の方が理解できねえよ。あれで調子に乗るから恐慌なんて起こすんだ」
それは言わないでくれよ、とアメリカは肩を落とした。各国から手ひどく責められた記憶ぐらいは残っているらしい。
「でも、電化製品は絶対に新しい方が良いと思うんだぞ。このラジオなんか、まともに使えるのかい?」
アメリカは近くにあった木製のラジオを拳の裏で軽く叩いた。
「なっ、何すんだばかぁ!!」
反射的にイギリスは怒鳴った。アメリカがきょとんとした顔をする。
「そんな、ちょっとコツコツやってみただけじゃないか」
「お前、憶えてねえのか?」
「憶えて、って何をだい?」
ああそうかよ、とイギリスはアメリカに背を向けた。
「イギリス。何で怒ってるんだい」
「何だっていいだろ。仕事の書類取ってくる」
アメリカが新しもの好きなのは十二分に理解しているが、それだけにとても悔しい――あのラジオは、昔二人でニューヨークを歩いた時に買った。
アメリカの中で「古くさい」ものはどんどん抜け落ちていくのだろうか。その中に自分も含まれている気がして、イギリスは歩きながら、俯いた。
- 了 -
|