衝撃が走る

07/09/18

「イギリスなんてっ!!」
「まってくれ、アメリカーっ!!」

――どうしてこうなったのか、わからない。
 突然アメリカが泣きながら駆け去った、歴然とした事実が信じられなくてイギリスは呆然と立ちつくした。追いかけなければいけないのに、受けた衝撃が強すぎて脚が動かない。

 ついさっきまで、いつも通りの会話をしていたはずだった。急成長したアメリカは身体ばかり大きくて中身はまだ子供で、何もわかっていない。外見に見合うように躾けなければ、と最近では今まで以上に目を掛けていたはずだ。それが、何故。

 何かと邪魔なフランス達は追い払った。
 若いアメリカが騙されぬよう、自分以外から何も買うなと言い聞かせた。
 どうしてそこまでするんだい、と口を尖らせるアメリカにイギリスは言った。

 お前は俺の可愛い弟だから。一人前になるまで俺がお前を守ってやるから。

 それの何処が悪かったのだろう。イギリスにとってはアメリカと出会ってから当たり前のことだったのに。彼が小さい頃からずっと言い続けてきたのに。
 イギリスは気づかなかった――いつしかアメリカは、その言葉を聞く度に悲しい顔をするようになったことに。イギリスにとっての最大限の愛情表現が、もはやアメリカにとっては辛いものでしかなかったことに。

「アメリカ……」
 やっと見つけた可愛い弟は、兄を振り返らずに言った。
「俺はイギリスから独立する」

 もう弟じゃない、弟じゃいられない。

 七月四日に受けた二度目の衝撃は、未だイギリスを縛り続けている。

- 了 -


 このタイトルにはこれしかない。これも思いっきりありがちですが、甘くなりそうなのを後回しにしないとモチベーションが低下しそうなので。

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