「――話にならねぇな」
イギリスはそう言って両手を会議場のテーブルに叩きつけた。
「おー、こわぁ」
こっそり造花造りをしていたスペインが肩をすくめた。口調は冗談交じりっぽいけど顔は怯えてる。イギリスはそんなスペインには見向きもせずに会議室から出て行ってしまった。
「会議……どうしましょう」
「しょうがねぇなあ。ちょっとお兄さん行ってくるわ」
フランスは立ち上がると、日本にウィンク一つやってからのんびりとした足取りでイギリスの後を追っていった。
きっとフランスなら、イギリスを挑発したり丸め込んだりして、上手いこと彼を連れ戻してくるんだ。
あの二人はしょっちゅう喧嘩ばかりしてるけど、付き合いだけは長いから。
俺はフランスみたいに上手くできない。俺がイギリスと話すと、どうしたって彼を怒らせちゃうんだ。
「アメリカ君、面白くなさそうだね」
俺の斜向かいに座ってるロシアが言った。彼がにこにこ笑ってるのが気に入らない。俺の気持ちなんかわからないくせに。
「――本当にわかりやすいですね」
日本が隣で何か言った気がしたけど、よく聞き取れなかった。
「おーい、アメリカ!」
「あれ、イギリスは?」
いつの間にかフランスが会議場に戻ってきたけど、隣にイギリスの姿は無かった。
「いやー、あいつちょっとヘソ曲げちまってね。お兄さんお手上げ。お前にバトンタッチするわ」
首を振るフランスの仕草は芝居がかってて、彼の言葉が全部は本当じゃない事ぐらいすぐに解った。
「しょうがないなぁ」
「頑張ってこいよ、ヒーロー」
――やっぱり、フランスはわかってて俺に任せたんだ。
掌で転がされてる気がしてすごーく面白くない。面白くないけど、今度は俺が席を立ってイギリスのもとへ向かった。
- 了 -
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