俺が友達になってやろうか、と言うと必ず「やーなこった☆」と返される。
独立されてからもう随分経つし、お互い普通に会話できるようになった。そろそろはっきりとした和解の証明として新しい関係を築きたい。お互い友達が少ないのでちょうど良いとイギリスは思うのだが、アメリカは絶対に首を縦に振らない。
「嫌ってるんだか嫌ってないんだかはっきりしろよバカ」
拒否するならするで嫌そうな顔をしてくれれば納得できるものの、イギリスのやや素直さに欠ける申し出を切り捨てるときのアメリカはいつも笑顔だ。
だからイギリスは、何処かで諦められずにアメリカを構い続けるのだ。
「――あれは誰かだって? イギリスだよ、船旅の途中で話しただろ?」
庭のプールに招いた新しい「友達」にアメリカは語りかけた。先日訪れた日本の近所を泳いでいたくじらはなかなか頭が良い。最初はちょっと苦労したが、仲良くなった今ではかなりの意思疎通が出来るようになった。
「何で断ったのか、って……それは仕方ないよ、彼とだけは友達になりたくないんだ」
そこでアメリカは、言葉を切って溜息を吐いた。
イギリスには、絶対に見せない表情。
「ただの友達なんかじゃあ――二重帝国にはどうしたってなれないけど。俺も、彼も」
くじらが大きな額を寄せてきた。どうやらアメリカと違って空気が読めるらしい。
だったら最初から仲良くしない方が良いんだ、とアメリカは鯨を撫でながら呟いた。
決して本心ではない、そして貫き通せもしない言葉だった。
- 了 -
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