「う、嘘つきやがってこのバカぁーーー!!」
――イギリスの怒鳴り声で窓ガラスが割れるかと思った。
「今のは、一体何があったんですか?」
涙目で会議室から飛び出していったイギリスと入れ違いで、日本が入ってきた。
「危うくイギリスさんと衝突しそうになりましたよ」
「ああ、ちょっと軽い嘘で彼をからかってやっただけだから気にしないで良いぞ。いつもの事だからな!」
「いつも、って……まぁ確かにそうですが」
日本はそう言いながら俺の向かいの席に座った。こういう時の彼の姿勢はぴんとしている。まるでイギリスみたいだ。
「アメリカさんは何故しょっちゅうイギリスさんをからかうんですか?」
「何で、って、そりゃあ面白いからに決まってるじゃないか」
俺が嘘をつくとイギリスはすぐに真っ青な顔色になる。涙目になる事も多い。とにかく世界が滅亡したかのような顔だ。それが、嘘だよと俺が教えてやるとあっと言う間に真っ赤になって、やっぱり涙目で怒り出すんだ。そのギャップがすごーく面白い。
俺がそう理由を説明すると、日本は何故か溜息をついた。
「アメリカ君」
そう呼ばれてどきっとする。いつもは俺の事をさん付けする日本がこんな言い方をするのは、年長者としてものを言う時だ。
「好きな子ほど苛めたくなる、という心理は王道ですので理解できますが、イギリスさんの性格ではやりすぎるとかえって逆効果ですよ」
「好きな子、って……まさかそれイギリスの事かい?」
「ええ」
俺はよほど変な顔をしていたらしい。日本が笑い声を漏らした。
「たまには八つ橋にくるまない言い方も有効ですね」
「ヤツハシ、って何だい?」
「京都の名物菓子です。今度お持ちしますよ」
イギリスさんとご一緒の時に、と日本は付け加えた。
- 了 -
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