蹴落とす

07/09/20

「新型戦闘機の設計図、届きました」
「ありがとう」
 ファイルを運んできた部下を下がらせてから、アメリカは中に挟まれた設計図を見た。流石は一流のアミューズメントを提供する会社の仕事だ。堅苦しいだけのデザインではなく遊び心があって格好良い。
「うん、これで行こう!」
 アメリカは自分が完成した戦闘機に搭乗しているところを想像した。正義のヒーローらしく、華々しく敵機を打ち落とす。枢軸側のパイロットがカートゥーンのキャラのように吹き飛んだ。

――ああ、でも、もう一人いる。

 くすんだ金髪の青年が思い浮かんだ。自分は彼に二度勝っている。彼を倒し、自由になった。しかし彼の足下はそれぐらいのことでは揺るがなかった。むしろあの頃より領土を拡大し、未だ大国として自分の前に立ちはだかる。
 彼との三度目の戦いは来るのだろうか。
 アメリカは思う。その時こそ彼を完膚無きまでに叩きのめし、自分の方が優位であると彼に思い知らせなければならない。
 それは恐らく国として生まれた者たちの本能だ(無ければとっくの昔に世界平和は実現しただろう)。中でも彼はロシアと並んでそれが強い。普段はどうにも格好がつかないが、いざというときの彼の非情さと徹底ぶりを今は、知っている。
 そんな彼を跪かせ蹂躙し、七つの海に向かう視線を全て自分に繋ぎ止め何処にも行けないようにしてしまいたい。

 その強い欲求が彼にしか向けられない事、かつて優しかった彼にすら向けていた事からアメリカは目を背けている。

- 了 -


 下克上万歳。

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