またたび

07/12/05

 アメリカが抱きしめてくるタイミングはいつも唐突で、長年――それこそ彼が幼い頃から―― 付き合いのあるイギリスでもあまり予想できない。ただ、昔は腰の辺りに抱きつかれる状態だっ たのが、アメリカがイギリスの背や体格を追い越して以来、気付けばイギリスの頭がちょうどア メリカの胸のあたりに押しつけられるかたちになっていた。
 薄いTシャツ越しに当たる胸板と、そして体臭。感じ取るたびにくらくらする。
(デカくなりすぎだバカ)
 心の中で悪態を吐きながらも、理性が揺らぐのを止められない。
 小さな、可愛かった弟が子供ではなく、雄になったと感じてしまう罪悪感。だが、イギリスは この匂いがたまらなく好きだ。

(イギリス、また意識がどっかにいっちゃってるなぁ)
 アメリカはイギリスの旋毛を見下ろしながら、苦笑した。
 イギリスが抱きしめられるのに弱いことは前々から気付いていた。その生い立ちから、スキン シップに慣れていないせいかとは考えたが、身体から力の抜けたイギリスはまるで全てをアメリ カに委ねているかのようで、このまま攫ってしまいたくなる。
(もっと強く抱きしめたらどうなるかなぁ)

 アメリカが逡巡したのは、一瞬。
 イギリスの理性が更にぐずぐずに溶けたのは、その次の一瞬だ。

- 了 -


 非常に発想が安直というか何というか。

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