「……重いんだが」
読書中の腕が不自然な位置になり疲れるのだが、下手に降ろして肘を当ててはいけない――そんなドイツの密かな気遣いを知ってか知らずか、イタリアは暢気に「ヴェー」と楽しげな声を漏らす。
「ドイツは太股もムキムキだー」
「毎日真面目に訓練すれば当然だ――ではなく、男同士で膝枕は不自然じゃないか?」
言いながらドイツの視線が左右に振れる。ここは公園のベンチで、しかもすぐ隣に立っている木以外に陽光を遮るものが無い。かなり人目に付きやすい場所と言えた。
生真面目なドイツらしい、心配だ。だがイタリアにとっては全く気にならないことのようで、そうかなー、と不思議そうに言った。
「だって俺、シエスタは気持ちいい場所でしたいもん。ドイツの膝枕すごくいいよ?」
(こいつは相変わらず本能で行動するというか……動物みたいだな)
イタリアと出会って以来、考え方や生活スタイルの違いに驚かされたり呆れたりするドイツだが、いつの間に苛立つ回数が減っている事に最近気づいた。
居心地の良いところが好き、と言うイタリア自身が、ドイツにとってそのような場所になっている。
「ねードイツ、だめ?」
「いや」
そう答えると、ドイツは再びページに視線を落とした。
- 了 -
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